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2023年

事務所通信12月号

経営:黒字経営への道しるべ(第5回)適切な労働分配を考える

 自社が稼いだ付加価値(限界利益)に対して、人件費(賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等)が占める割合を「労働分配率」といいます。人手不足等で賃上げの機運が高まる中、適切な労働分配率の管理はますます重要になっています。
 人件費の原則は、「労働分配率をおさえながら1人当たりの人件費を高く」することです。ただし人件費を増やしすぎれば赤字に転落するおそれもあるため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。従業員にとって納得感のある給与水準とするには、①年収の時給換算で生産性アップ②柔軟な勤務・給与体系の設定③利益を公平に分配するルールづくり――といった具体策があります。
 適切な労働分配率の管理とともに、原資となる限界利益を増やす取り組みも重要です。

税務:令和5年分「年末調整申告書」作成上の注意点

 年末調整事務は、従業員が提出した基礎控除申告書、扶養控除等申告書などの「年末調整申告書」に基づいて行うため、従業員に記載上の注意点を事前によく説明しましょう。
 本年中の従業員の親族の異動(結婚、出産、家族の就職、離婚、死別など)について確認し、訂正等があれば、再度、扶養控除等申告書の提出を受けます。
 配偶者控除等や扶養控除等を受ける従業員には、配偶者や子どもの収入(所得の見積額)の誤りや記載もれがないよう、よく確認するように注意喚起しましょう。
 また、年末調整事務の電子化も検討してみましょう。電子化によって、給与事務担当者と従業員双方の事務負担を減らし、会社全体の生産性を向上させることができます。

労務:押さえておきたい! 外国人材活用の基礎知識

 訪日観光客の対応や人手不足の解消が期待される外国人材の活用。外国人(日本国籍を持たない人)には、入国の目的に応じて「在留資格」が与えられており、その資格の範囲内でのみ、就労することが可能となっています。
 また、中長期で日本に在留する外国人には、多くの場合「在留カード」が発行されています。外国人材の採用時には、同カード表面の「在留資格」欄や「就労制限の有無」欄、「在留期間」欄を必ず確認しましょう。
 なお、外国人材に支払った給与等は国内源泉所得に該当し、所得税と住民税の課税対象になります。住民税については、前年に給与所得がある場合、日本人従業員と同様に特別徴収(給与からの天引き)を行うことになります。未納があると、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。国籍を問わず、適正な納税が大事です。

事務所通信11月号

労務:正しく知って「働き控え」の見直しを!「年収の壁」をおさらいしよう

 最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、経営者にとっても大きな関心事の1つです。
 所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、社会保険の加入対象となる「106万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」――。これら3つの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。
 「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。

消費税:こんなときどうする? インボイスの処理についての素朴な疑問

 インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として一定事項を記載した帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存が必要です。一方で、実務では、次のようなケースもありますので対応を確認しましょう。
○インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れであっても、令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額について仕入税額控除が受けられます。
○従業員の通勤手当・旅費交通費等において、賃金規程等に基づいて従業員に支給する通勤手当、出張旅費規程等に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
○旅費交通費や備品購入等における従業員の立替払いの精算については、原則として「会社宛てのインボイス」が必要です。「従業員宛てのインボイス」の場合は、従業員が作成した「立替金精算書」等も合わせて保存することが求められます。

税務:令和6年から変わる 贈与税の「暦年課税制度」

 贈与税の課税方法の1つである「暦年課税制度」は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた価格に課税されるものです。直系尊属(父母や祖父等)から18歳以上の子や孫等への贈与は、一般の贈与よりも税率が軽減されています。
 同制度では、相続等によって財産を取得した人が被相続人の死亡の日からさかのぼって3年の間に取得した財産について、相続税の課税価格に加算されます(相続前贈与の加算)。
 令和6年1月1日以後の贈与から、この加算期間が3年から7年に延長されます。加算期間の延長によって相続時に課税される相続財産が増加するため、相続時の税負担が大きくなることが見込まれます。同制度の活用は早めに検討しましょう。